看取り先生の遺言
八月に入り、本格的な暑さの中、会員の皆様にはいかがお過ごしでしょうか。今月は一冊の本をご紹介します。奥野修司著「看取り先生の遺言」(文芸春秋)」(文庫本は文春文庫)です。治らないがん患者のために在宅緩和ケアを立ち上げ2000人以上を看取った岡部健医師。そして自分自身もがんを患い、最後まで「日本人の死の迎えかた」を説きつづけ亡くなった、がん専門医の往生伝です。
巻末には京都大学教授のカール・ベッカー氏との対談も掲載されています。
この対談の6日後に岡部健医師は、逝去されました。戦後、死は病院という閉鎖された空間に囲い込まれてしまい、人が死にゆくところを見守った経験がない人ばかりになってしまいました。しかしかつて死は在宅死が7割以上を占め、身近にあったのです。現在国は医療費削減のため、在宅死の流れを加速しています。多分「看取り」の考え方が変わり「日本人の死生観」も大きく変化してゆくのではないでしょうか。私はこの本のこと、岡部健医師のことは忘れないと考えます。この数年間に読んだ本の中で一番おすすめの一冊です。
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